「こちらへどうぞ。」


執事さんらしき人にカバンを持ってもらい、何故か郁の腕にあたしの腕を絡ませて豪邸の中へ入る。


重そうな扉が開いた瞬間、あたしの目の前には信じられない光景があった。


「「「「「「「「「「おかえりなさいませ、おぼっちゃま。」」」」」」」」」」


腰をまさに90度に曲げているような人達がそこにはたくさんずらりと並んでいて、真中には赤いじゅうたんが奥の奥の奥の方まであった。


まさに夢のような場所…に突然来てしまったあたしは、驚きを隠せなかった。


だって、今までのデートだって普通の男の子って感じの服だったし、何よりこの前自転車で来てたはず…!


あたしが驚きすぎて固まっていると、郁が「何やってんだよ。」とあたしの膝を軽く蹴って置いて行こうとするので、慌てて追いかける。


こんなところに一人にされたら、いつかあたし緊張と不安のせいで死んじゃう…!


と、郁の部屋につくまで一人でかなりびくびくしていたあたしは、そのあと郁に爆笑された。


「あっはははははははは!緊張と不安で死ねるのかよ、くっ…ぷっ…」

『そこまで笑わなくても…というか、笑い方変になってるよ。』

「あぁん?うっせぇよ、てめぇが面白いのが悪ぃんだろ。」


本当、どうしてそんな言葉遣いなんだか…


可愛い顔をして「てめぇ」と言った郁に小さくため息をつく。


それに、「てめぇ」じゃなくてあたしには「瑠璃」っていうちゃんとした名前があるのに…