いろいろと思考を巡らせていると、ようやく目の前に郁がいた事に気付く。


そして、そんな郁の後ろには…まさかの黒い車。


いくらあたしが都会に住んでいるとは言え、隅っこ。かなりの隅っこに住んでいるため、黒い車の経験なんかない。


もしかしたら郁と関係ないのかも…?


なんて思ってみるも、郁の右手はしっかりと黒い車のボンネットの上、においてある。



『………郁?』

「そうだよ、俺。つか他に誰がいんだよ。」


何回瞬きしても結果は同じ、ほっぺたをつねっても変わらない。


…という事は、これは夢じゃない!?


あたしは、自分の彼氏がお、お、お、おぼっちゃまだという事もわからなかったのか…


なんてヘタレな彼女だ…と思いながら項垂れると、郁が急に笑い始めた。


『ちょっと、なんで笑ってるの?』

「だってよ、お前態度に出過ぎだし!」


そう言ってケラケラと笑う郁。


その笑顔は凄く眩しくて、あたしなんかとは比べ者にならなくて、


不覚にも、いや、不覚じゃないけれど。


笑う郁にときめくあたしがいた。