その姿を見送っていると、何か忘れものをしたのか戻ってきた。


「どうしたんですか?」

言い忘れたことがあって。先輩はそう言うと、私の前に立った。


「これまで通り、先輩後輩で一緒にいるのも楽しいけど、違う世界で過ごしてみない?

カエデちゃんがほしい居場所、俺はいつでもあげる。

というか、俺も居場所がほしいんだよね。カエデちゃんの中に」


ゆっくり考えてみて。先輩はそう言うと、小走りで戻って行った。


ざわっと木が揺れた。

だんだん小さくなっていく先輩のうしろ姿を見ながら、久しぶりに動揺していた。