「ずるいよ…」 あの画集が欲しいって話をしたのは高校生のとき。 それもあの一回だけ。 「へぇ。カエデって絵が好きなの?」 「好きっていうか、絵を見ながら作者がこんな気持ちで、こんな環境で、絵を書いてたのかなって想像するのが好きなの。 この人の書く絵はそれが想像しやすいし、見てて飽きないから好き」 「カエデらしい」 そんな会話。私ですら忘れていたのに。