――ジュー

キッチンにいるのに、フライパンで焼く音が遠くに聞こえる。

今日はハンバーグ。



本当は、作る気力なんてない。

だけど先生に不審に思われないように、普通にしなきゃと作ったハンバーグ。




「ただいま。」

「ぎゃっ!」


ドアが開く音も聞こえなかったあたし。先生の声がいきなり聞こえて、びっくりする。



「なんだよ。」

クスクス笑って、ビシッと着ているスーツの上着を脱いでネクタイを片手でぐいぐい引っ張って緩めた。



そんな姿でドキドキと鳴る心臓。

もうドキドキなんてしちゃダメなんだよ、と自分に言い聞かせる。