「で、きな子!お前はボーッとしてないでさっさと棒でも何でも倒して決めろ!」
「あ、はいはい」
つい余計な思考が働いていた。
きな子は道のY字の真ん中で割と長めの棒を立てた。
思えばあの辺りに木なんてないのに、よくこんな良い感じの枝があったものだ。
長さも固さも良い感じ。
枝からそっと手を放すと、ちょうどなタイミングで風が吹いた。
風に煽られた枝はそれに従って、右へ倒れる。
「右だって」
きな子が指差すとピョン吉は待ちくたびれたように腰を上げてそちらへ歩き出す。
それを追いかけるきな子と、何か言いたげなライオン。
「……お前、きな子ってあだ名なんだな」
「ごめん、それ本名です」
紀奈子と申します。
こんな名前にした両親をわりと恨んでいます。
きなこもちは好きです。
「あ、ライオンさんはなんて呼んだらいいのかな」
「俺はライオン以外何者でもないよ」
「……そうですか」


