「…仕方ないか」 私はまた進行方向を向いて歩き出す。 …高校入ってから、ひとりで帰るのは初めてかもしれない。 じとじとと降り続く雨のせいか、気分も憂鬱になる。 …理由は雨のせいだけではないのかもしれないけれど。 「あれっ、美桜じゃん」 「えっ?」 いきなり声をかけられて、ビクッとしながらも振り向いた。 ───馴染みのある、声だったから。 「たっちゃん!!」 「何時間ぶり?」 そこにいたのは、よく見慣れた顔。