リンゴの皮が床に落ちた。


仕方なく、「よいしょ」と拾い上げる。


───お母さんが、急な用事で千秋を私に任せて帰ってしまったのだ。


それで仕方なく、お母さんの代わりに「リンゴが食べたい」と言う千秋のために、不器用ながら懸命にリンゴの皮を剥いているのだ。



「…お姉ちゃん、手つきが危なっかしいんだけど」

「リンゴ食べたいんでしょ」

「皮剥いたのに、お姉ちゃんの血で赤く染まったリンゴは食べたくないよ」



…全く、失礼だ。


私だって、そんなヘマはしない。