流華の楔





目を覚ますと、そこは「屯所」だった。



『………』


広間に歩を進めれば、懐かしい面々が揃っている。


さて、己の席は近藤の隣だ。

中央をつき進んで定位置に座ると、全員の顔がよく見えた。



『ところでトシ、お前は何をしているんだ?』

『何って…おいおい近藤さん、そりゃあないぜ』



近藤の問いに首を捻る。


己の役目は近藤の隣で仲間を見守ること。

そうだろう?


逆に問うてやれば、近藤は何故か寂しげな表情を浮かべた。



『…忘れてしまったのか?』

『何をだよ? 俺の居場所は後にも先にも新選組と近藤さんの、』

『違う。お前が今いるべき場所はここではない』



瞬間、先程までの賑やかさが嘘のよううにしんと静まり返る。

何を言っているんだ—―そう問おうとしたとき。