流華の楔





「君って……本当に罪な子だよね。ていうか、あの薬の量で眠くならないって凄すぎ。土方君と同じものを飲んだとは思えない」


和早が出てきた部屋を覗き込んで再びこちらを向くなり、大鳥はしみじみと言った。


「“そういうの”には慣れてますから」


大きなお世話だ、と和早は思う。
それに何だこの「大鳥との遭遇率」は。



「でもさ……好きな女の子に守られる大の男の気分って、すーーんごく惨めなんだよ? 知らないの?」

「知りませんよ。あの人の性格上『やっぱ俺戦うぜ』とか言い出すのは間違いないんで。第一あんな怪我人が前線に出てきても邪魔ですから」

「(ど、Don't mind 土方君…)」


あんなに必死に隠そうとしていた怪我を知られているばかりか、邪魔者扱いされる始末。

大鳥は眠る土方を思い浮かべながら、けっこう真剣に同情した。


仕方ないのだ……新崎和早という人間を好きになるということはこういうことなのだ!

…うんうん。