刻は過ぎ。


旧幕軍を上回る最新鋭の兵器と戦術を備えた新政府軍相手に戦いを挑んだこちらの戦死者は、回を重ねるごとに肥大。


唯一完全な勝利を収めたのは土方が率いた軍のみで、全体の勝機は急激に薄れていった。



そんな中、五月一日。

榎本と土方、そして和早を含めた数名の高官が集まり極秘で会談を開いた。



「おそらく政府は近々、疲弊した我らに総攻撃を仕掛けてくるでしょう。水を差すようですが、この作戦では無駄な兵を失うことになる」


葵、もとい和早が提示された図面を見下ろしつつ言う。
その冷静な物言いは、当然のように反感を買った。


「何だと…? では聞くが、貴女ならどうするというのだ!」

「……」

「それみろ。何の考えも持たぬ女が口を出すでないわ!」



周りが固唾を飲んで見守る中、和早は不敵に笑んで口を開く。



「ご心配なく。策ならば既に総裁へ進言しております故」

「な、何…」


押し黙る高官。



「ああ、それと」


和早はちらりと横を見る。
何だ、と土方は眉を潜めた。



「次の戦は……私が指揮を執ります」