流華の楔





「…いない?」


しんと静まり返る室内のどこを見ても土方の姿はない。

というか、人すらいなかった。



「くすっ、なるほどね…」


まんまと謀られたらしいが、なかなか有意義だった。

…おかげで謎が解けたから。





「……と、いうことは」



そろそろ来る頃だろう。

己と同じように、大鳥に騙されたあの人が。




「和早無事か…ってオイ、こりゃあどういうこった?」

「騙されたんですよ。大鳥さんに」



予想通りの展開に肩をすくめつつ、背後で息をきらす土方に向き直る。


大体、土方が馬から落ちたという時点で疑うべきだったのだ。

大鳥の下手な演技もまた然り。