「生きてたんだな、お前」
「ええ」
和早は小さく頷く。
「最初からその予定だったんですよ。表面上は和早を殺し、幕府にも長州にも属さない新たな人間に生まれ変わると。まあ結局戦争には参加してますけどね」
あの日、死なない程度に重傷を負える箇所へ銃を撃ち込むよう龍馬に託した。
すべては「演技」だったのだ。
近藤の命を救った後、和早の存在を無にする為の。
唯一の心残りは、前者だ。
「…そうだったのか」
「私が元々は長州の者だという事は、あの場にいた…沖田さんか藤堂さんに聞いたでしょう」
「ああ」
…なら話は早い。
名残惜しくはあるが土方と相見えることはもうなくなるだろう。
それが、己のけじめだ。
「副長」
「なんだ?」
「重ね重ね、騙すような真似をして申し訳ありません。…局長を救えなかったことも私の責任です」
新崎和早としてはもう新選組にはいられない。
これからは葵として生きる。
「…今まで、お世話になりました」
和早は、土方の中で生きてさえすればいい。
