流華の楔





「…さて谷守殿、お聞きいただこうか」


和早が龍馬を促す。
それを期に龍馬の顔は真剣そのものとなり、場の騒ぎは鎮まった。


「近藤さんは犯人じゃないぜよ」


じ、と近藤を見つめて言った。
思わぬ証人に戸惑っていた役人も彼の声に聞き入る。



「俺を殺そうとした人間の中に新選組はおらん。断言するぜよ。…それに、近藤さんは俺の友だ、むごごごっ!」

「馬鹿っ、それは言わなくてもいい!」



和早は慌てて龍馬の口をふさいだ。
これでは「自分は幕府に加担してます」と言っているようなものだ。

せっかく助かったのにまた命が危うくなる。



「…まあ、そういうことです。罪人の身分を考慮することなく、しかも無実の罪で斬首を決定したあなた方重役の責任は重い」

「そうじゃ! いっぺん洗濯してやらんと気が済まんぜよ!」

「……」


真面目なのか、この男は。

和早は横でガハハと笑う龍馬を見、心の中でため息をついた。