流華の楔




しかしこの谷守。
後にも先にも存在しないほどの大の坂本贔屓である。

「先生、先生」と慕っていた恩師が殺された恨みは根強い。

この程度では折れなかった。



「…はっ、嘘を申されるな。まるで場に居合わせたかのような口振りだが、罪人を庇い立てるような逆臣の言うことなどたかが知れている!」

「な、何と…谷守! 口を慎め!」


谷守の疾呼に反応したのは、重役だった。



「(逆臣…あの対応…いったい何が起きてるんだ!)」


沖田は苦悶する。
しかしちらと隣を見れば、完黙を貫く藤堂が泰然として成り行きを見守っていた。

何でそんなに落ち着いていられるんだ。



「…何か知ってるんですか、平助君」

「ん? あー、まあね…」


バツが悪いのか、少し言い難そうに答える藤堂。

微妙なな空気が流れたが、二人は再び和早の声に呼び戻された。