流華の楔





「くっ…!」



手足を縛られた状態で谷守の前に放り出された「証拠」は、憎々しげに和早を睨み付けた。

見れば、顔の随所に痣がある。
拷問にかけられたようだ。



「坂本が近江屋に入った直後、坂本を付けていたこいつが店の前に居座った。乞食のなりでな」

「…何?」

「こいつは仲間を手引きして坂本の部屋に押し入った、暗殺の張本人だ」


冷淡に見下ろす和早。
その風格たるや一介の武士のそれではなかった。



「聞けばこの男…見廻組だそうだが」

「な、んだと…?」


政府の重役陣にもどよめきが走る。
とりわけ谷守は顔面蒼白で、身体が小刻みに震えていた。



「ちなみに、原田左之助のものだとされる鞘は偽物だ。本物は私の鞘とすり替えたからな。誰が原田の鞘だと証言したかは知らないが、よほど新選組に恨みを持っていたとみえる」



圧巻の畳み掛けに、処刑に立ち会った誰もが声を失った。