流華の楔




処刑当日。



予想に反して、近藤の表情は晴れやかだった。

少し痩せてはいたが、髪や髭も綺麗に整えられている。

こんなに綺麗な人間が本当に死んでしまうのかと沖田は思った。



「っ、どうして近藤さんが…!」



沖田の隣で、頑丈に組まれた柵を悔しげに握りしめる藤堂の姿が横目に映る。


何故、斬首なのだ。
何故、武士として死なせてやれないのだ。


柵の向こうの仲間を見つめ、沖田は呆然と立ちすくんだ。



「総司…?」


刹那、近藤と視線が合う。

沖田は「はっ」と目を見開き柵に縋った。



「近ど…っ」


駄目だ。叫んではならない。

ひとつでも政府の気に触れることをして新選組だと気付かれたら、脇に控える鉄砲隊が何をするかわからない。

そうしているうちにも処刑の準備は進んでいき、罪状が読み上げられる。


何も聞こえない。
視界が霞んで、何も見えない。


「…、くそ!」


近藤の首が傾けられて、頭上に刃が光った。

ごめんなさい。
助けられなくて、ごめんなさい。

こんな時、彼女だったらどうするのだろう。


悔しくて。
悲しくて。
情けなくて。

沖田がきつく目を閉じた、その時。