土方は戦いの場を会津に移し、転戦した。
そんな中、
『自分も同じ目に合うのが怖くて逃げたのではないか』
『新政府と内通していたのではないだろうか』
美貌の剣士、新崎和早に関する様々な憶測が隊士の間で飛び交った。
初期の頃から新選組に属していた和早だが、寄せ集めの隊士達には関係ない。
言いたい放題だった。
「…お前ら、いい加減黙らねえと自分の首が飛ぶぞ」
土方の一喝が飛ぶ。
ひっ、とどこからか小さな悲鳴が上がった。
土方は忌々しげに鼻を鳴らし、視線を落とす。
処刑は四月二十五日。
今日は二十四日。
もう、間に合わない。
試衛館時代から苦楽を共にしてきた仲間がまたひとり、この世を去ろうとしている。
己の失策のせいで。
己があんなことを言い出さなければ近藤は斬首になどならなかったかもしれない。
そう思うと、自分を殺したくなった。
「ごめんな、かっちゃん…」
土方は処刑地の方角を仰いだ。
今ごろ沖田と藤堂が向かっているはずの、新選組局長の死に場所を。
