流華の楔





好きとか、嫌いとか。
そういった感情はとうの昔に捨てている。

…いや、捨てなければならなかった。


御庭番は「無感情」が重要だったから。

そして、今も同様に。



「特にそういう方はいないので…答えられませんが」


たとえその情が備わっていたとしても、答えを出すことはない。



「うわ、最悪じゃないですかそれ!」

「は? どこがですか。そもそもいきなり訳のわからないこと聞くのが悪いんですよ」


沖田の批難が妙に苛つき早口で反論する和早。

雰囲気が一気に崩壊した。



「訳わからない? ほんと馬鹿ですねばーかばーか」

「へぇ…私のこと好きなくせにそんなこと言って良いんですか」



ほんの冗談のつもり。
だから何も考えず言葉に出した。

それが間違いだった。


沖田が押し黙った時、それを悟った。