「ところで、一つ伺っても?」



いつの間にか隣にいた沖田がこちらを覗き込む。

その手は和早の結わえた髪にまわり、艶やかなそれをゆるりとすくって自身の唇に寄せた。

その仕草は、至極妖艶。



「…、どうぞ」


彼にしては珍しい…いや、奇っ怪とも言える行動に半ば声を詰まらせる。

一種の制裁でも始まるのかと本気で身構えた。


「斎藤君と何かありました?」


沖田は鋭い。
斎藤と同様に表面上はのらりくらりとかわしているが、実は全てを見通している。

この“勝負”は、負ける。



「…いえ、別に何も」

「何もないなら目を逸らしたりしない」

「…っ」


耳元に吐息。
くつくつと、わらい笑いを堪える音。

…明らかに愉しんでいる。


わかっているのに、身動きが取れなかった。