何も掴めない。 すべてが掌をすり抜けていく。 けれど。 「必要としてくれたのは、素直に嬉しかった」 胸を押し、距離を取る。 やや乱れた衣服を整えて斎藤に背を向けた。 歩き出すまでの数泊。 後ろ髪を引かれる思いだった。 それなのに、歩き出してしまえば簡単に戦へと引きずりこまれる。 生きる意味は、そこにある。 護るべきものの為に。 己の矜持を完する為に。