「そりゃ、伝える事は大切だと思うよ。けどさ、伝えないまま心ん中にしまっておくのも悪くない……そう思ってる。特に俺みたいな半端な男はさ」
「平助、お前……」
「未練はさっき吹っ切れたし、もういいんだ」
そう言って両腕を後頭部に回し、ごろりと寝転ぶ。
原田と永倉はその様子を黙って見ていた。
吹っ切れた――。
そう思ったところで、彼女を思い出さない日はこないだろう。
自分は、彼女を好いている。
だけど彼女は、そういう感情を自分に向けることはない。
そう、思った。
彼女を必要とする人はたくさんいるだろう。
そして、彼女が必要としている人もきっといるはず。
「(…だったら……)」
その中の一人として彼女に覚えて貰えれば、それで充分だった。
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