淡々と話す土方の口から斎藤の名が出た時、思わず「え」と声を漏らす。

土方の視線が、一瞬揺れた気がした。



「あー……心配するな。あいつは新選組を裏切ったんじゃねーし、好きで離隊する訳でもねぇ」


「では、斎藤さんは間者として彼等について行くということですか…?」


「…ったく、鋭過ぎだろ、お前」




そう言って微笑する土方は、近くで見ると五割増しに妖艶だ。

確信犯か、と内心思った。





「土方さん。……私がどうこう言える立場でないのは重々承知の上で言わせて頂きます」



「…ああ。なんだ?」






仲間がばらばらになるのは不本意だ。



だけど。





それ以上に、仲間が傷付くのはさらに不本意なことで。







「藤堂さんは、新選組にとって必要不可欠な人です。だから――」


「当たり前だろーが」


「…え?」


「あいつだけは“何があろうと”ここに戻ってこなきゃならねぇからな」



に、と笑む。

それが、和早の意図を汲み取った土方が出した答えだった。




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