彼女が言った“友好的離脱”という単語に、土方はピンときた。




「誰だよ、口軽ぃ奴…」



半ば呆れ、土方は溜息をつく。
和早と関係が深い幹部の誰かが話したのだとすれば、おそらくこちらの見解も伝わっているに違いない。

だいたい予想はつくけれど。





「はぁ……その話、総司にでも聞いたか?」



和早の目が見開かれる。
やっぱりあいつか、と二度目の溜息。




「ええ。甘味処に行った時、ついでとばかりにぺらぺらと話してくれました」


「……そうか。で、どこまで聞いた?」



苛々を隠さず、和早に尋ねる。
眉間の皺がいつもより深い事は気にしないでおく。





「そうですね。あわよくば……というところまで」



「おい待てよ、その件は俺と近藤さんしか……、っ!」



“かま”をかけられたと気付いた時には、もう遅い。
和早の唇が歪み、視線は手元の刀へ落ちた。





「……やはり、消しますか」



哀しいのか。
それとも、自分達の決断に失望しているのか。


彼女の表情は、何も読み取らせてくれなかった。




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