帰路の最中、斎藤は頻りに寄り道したがった。




何故。



理由は簡単。





斎藤と共に同行したであろう幕府関係者に、和早の存在を悟られたくない。

ただそれだけ。



早く進めば進む程、前を行く幕府の密使に出くわす可能性がある。



それを考慮したのだ。




和早はそこから憶測を広げた。




斎藤は自由が幕府の関係者であることを知らないはず。


そこまで避けているのは、おそらく新選組の誰かがその中にいるからだろう。









「和早、この辺にどこかいい宿はないか?」




先を行く斎藤が、和早を振り返って尋ねた。




穏和な表情。




その心遣いが、嬉しいと思った。






そして。



持ちつ持たれつ、帰路は続いた。








誰にも、遭遇することなく――。




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