暫くして。

預けていた身体を離し、斎藤から一歩退いた。




「斎藤さん」


「…何?」



「好きでもない女に、こういうことするのはやめた方がいいですよ。初恋の方はどうなさったんです」



一時でも好いた人がいるならば、なおさら。
自分のような者に、流されている場合ではない。






「あの人は……死にました」


「え…」



「正確には、殺された」




一瞬、世界から音が消えたかと思った。

自分は、触れてはならないところに触れてしまったのではないか。



後悔に駆られた。