流華の楔






沈黙に沈黙が重なり。


何から話せばよいのかと迷っているうちに、町の外れまで来てしまったらしい。


城が遠い。




「和早」


「…はい」



“和早ちゃん”ではない。
本当の斎藤なのだな、と思った。




「伊東さんが言っていた。“新崎君は長州にいるかもしれない”と」


「はい」


「……信じたくなかった。何故彼女が長州にいるのだろうかと。理由を探した」


「………」


「けど、やはり……あんたが長州と通じてるのではないかという答えしか見つからなかった」



正解。
むしろ、自分はもっと酷い立場にいる。





「……あたりですよ、斎藤さん。あなたは間違ってない」


「…っ」


「私は、長州大名家の娘。…先程は見苦しいところをお見せしました。あれは私の部下で、ただの幼馴染み。許婚など嘘八百です」




本当は、本当は戻りたかった。

新選組に。



けど、もう無理だ。




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