流華の楔





ばん、と襖が開く。


どういうことか。
目の前にいるのは、斎藤一。




「和早ちゃん!?」



「さ、斎藤さん…どうして…」




いるはずのない人が、何故。
あまりに唐突過ぎて、言葉も出ない。





「たまたまここを通ったら、和早ちゃんの声がしたと思って…、」



「うそ……今日は予約客しかいないと――」




まさか。

宿の主が言っていた予約客というのは斎藤達のことなのか。





「てゆうか何で和早ちゃんがこんなとこにいるんだ! ここは長州だろう!?」



「おい、貴様…! 新崎様に向かってその口のききかたは――」


「黙れ佐上。それ以上喋ったら斬るぞ」



かち、と少しだけ刀を抜くと、佐上は押し黙った。






「…あんた、誰?」



低めの声で、斎藤が言う。
彼の目は真っ直ぐに佐上を見据えていた。





「この人はただの、」


「佐上正太郎と申します。一応、この方の許婚です」


にこり、と笑む。
予期せぬ言葉に和早は焦った。



「な、違うだろう…!」




牽制のつもりか。
余計な事を言ってくれた。


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