流華の楔






驚きを隠せない佐上の前に、和早が座り直す。





「……だけど、ごめんなさい。私は佐上と生きられない。勿論好きだよ。でも、佐上と同じ意味の“好き”じゃない」




和早の一言一言が、佐上の中に深く染み入る。



振られた。

なんだか予想していたよりキツいな、と佐上は思った。







「ごめん。…今日はもう帰ろう。兄も動いたみたいだし」




立ち上がる。


が、襖に手をかけたところで和早は己の背に温かみを感じた。





「誰か他に……心に決めた方がいらっしゃるのですか」



和早より幾分背の高い佐上が、華奢な彼女を抱きしめる格好で聞く。





「…いるよ」




そう答えるしかなかった。
いたずらに期待を持たせるのは相手に酷過ぎる。


ましてや、これから最大の敵と化す己にそのような情があってはならない。





「……そう、ですか」




身体が離れる。

もう一度「ごめん」とだけ言って更に距離をとろうとした。




その時。