流華の楔








佐上は幼い頃から幼馴染みという枠を越えて和早を慕っていた。




正直、この縁談が嫌だというわけではなかった。



しかし。
政略紛いな形で夫婦になるなど以っての外。




今でも慕っているからこそ、こんな形で始めてはならない。






『お前はこの縁談に反対か』




そう和早に問われたが、すぐに返すことができなかった。



反対ではない。
かといって賛成でもない。





「どうなんだ?」



「自分は…」





女を捨て。
男として生きる彼女を。






「……貴女を、お慕いしておりました」






こんなもの、和早が求める回答ではない。

わかっている。




彼女を困らせることも。








「知っていた」



「…え?」




耳を疑う。
彼女は今、なんと。






「……知ってたよ」




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