流華の楔





俯く佐上。

あの件を知らされているならば、それも無理はない。



縁談。



有り得る話ではあった。
有真が策として使う以前に、父が生前仄めかしていたことだったから。






「いつからこうなってしまったんでしょうか」



いつから。
何気ない一言が胸を突く。



仲の良い幼馴染みは、いつの間にか主従関係となった。


でも。
気付かないふりをしてそのまま離れ離れになった。





「…仕方ないんだよ。これも運命なんだから」



「だからって、縁談まで…!」



「そうか……やっぱり知っていたんだな」



少し笑う。
有真は正式に決まるまでは内密にしようと言っていたはずだが。

まあ、口を滑らすのは兄の十八番だから仕方ないか。