空気が波を打った───そう錯覚してしまうほど、ひと太刀が重かった。
「───!?」
入隊試験の噂を聞き付けてやって来た他の隊士らは、まさかの激戦に瞠目する。
「うげ…」
神道無念流の使い手、永倉新八までもが声を漏らす。
いったい、彼の華奢な身体のどこにそんな力があるのか。
「──くッ」
相対している土方の頭でもそのことだけが交錯していた。
「(こいつ……強いな)」
細身から放たれる殺気が、土方の目にはっきりと映った。
だが、それだけだろうか──?
単に強い人間ならある程度の数存在する。
だが、新崎和早という人間は何かが違う気がした。
この“女”は“何かを背負って”いる。
土方は戦いの最中そう思った。
「面白い…」
何を背負っているかは知らないが──その意志を買おうじゃないか。
「入隊を許可する」
木刀を捨て、土方は「にやり」と笑った。
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