「そろそろ始めるぞ。…面倒臭ぇ奴らが来る前にな」
「………」
面倒臭い奴ら……。
こんな冷酷の塊のような男を苦々しい顔付きにさせるくらいだ。
相当なのだろうな、と和早は心の中で思った。
「──いくぜ!」
土方は木刀を構えるや和早に向けて鋭く振るった。
「…──っ」
和早は土方が木刀を振り上げた刹那、一瞬にして体勢を整えその切っ先を寸前でかわした。
その後は、和早の防戦一方となる。
「おいおい、避けてるだけじゃ倒せねぇぜ?」
「…………」
和早は依然として仮面のような表情のままだ。
ここぞとばかりに、土方は渾身の一撃を放つ。
───しかし。
「なに…?」
和早は、その一撃を受け止めていた。
彼女が土方の太刀をまともに受けたのは、おそらくこれが初めてだろう。
和早は瞠目する土方の木刀を薙ぎ払い、自らのそれを転じた。
「なに…ッ!?」
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