黒アゲハ Ⅰ -小さな宝物- 【完】



「大丈夫か……?」


純が心配そうに聞いてくるが、あたしはあまりの痛さにどうすることもできなかった。


荒い呼吸で息をするあたしに、純は背中をさすってくれてる。


「……ごめん、大丈……夫ッ……」


みんなはあたしを心配そうに見つめてくるけど、あたしは目を合わないで

「あたし……昔のこと、知らないの」

と言った。


これは事実。

あたしは小さい頃の記憶が一切なく、写真やビデオさえなんにもなかった。