黒アゲハ Ⅰ -小さな宝物- 【完】



「おいっ結奈来るんじゃねぇ!!」


純の言葉も耳に入らず、あたしは高峰亜蘭に殴りかかっていた。


でも……


「甘いな、結〜奈ちゃんっ♪」


あたしのパンチは高峰亜蘭の手によって掴まれた。


『相手の隙を狙うんだ』


この言葉があたしの脳裏に浮かぶ。


「あたし、甘いのかな〜?」


そう言って、掴まれていない手で高峰亜蘭の腹を思いっきり殴り、そしてあたしの手を離した瞬間に顔面を殴った。


高峰亜蘭は地面に膝をついて耐えているよう。


「ねぇ、聞いてるじゃん。あたし、甘いのかな〜?って」


あたしの声はかなり低かったと思う。