謝罪人 Kyouko スピンオフ小説

拓也は、一晩ネットカフェで過ごすことにした。

拓也は、電気代を支払っていなかった。
正確にいうと、支払えない状況である。
ここ数ヶ月間収入がないからだ。

電気代の他、ガス、水道、家賃まで未納だった。
このままでは、生活ができない厳しい状況が続く。
拓也は焦った。

個室の椅子に座って皮の折りたたみの財布を手にした。
財布の中身は、千円札が四枚と小銭が少しだけ、それが全財産だった。

拓也は深いため息をつく。
財布の中に名刺を見つけた。
名刺は、『世渡り商社』の木村のものだった。

拓也は、以前に木村からスカウトされて受け取ったことを思い出した。
捨てようと思ったが、少なくとも自分を必要としてくれた人からの名刺だったため、そのまま財布の中にしまい込んだ。

拓也は、名刺をじっと見つめた。

今の状況では採用してもらえる会社もない。
少し怪しい会社のような気がしたが、厳しい生活の状況を変えるのは、これしかない。
その瞬間、木村の会社に行ってみようと思った。