ビター・ビター・チョコレート

艶子がバサリと髪を掻き揚げる。



すごく綺麗な人だと思う。




その才能も美貌も業界ではトップと言われ、海外公演も大人気のトップピアニスト。



俺は、その女性が怖かった。





「美琴に……会いたい……」




「なら、ピアノを弾きなさい。その気持ちをピアノにぶつけなさい」




ピアノの音には性格が乗り移る。




その時の感情が、そのまま表現されるのだ。




心が静かな時は静かな音を奏で、荒れているときは音も荒れる。




その、感情のままに表現する艶子は、いくつもの恋愛をしている。




俺も、その一人に過ぎない。




再び、着信が入った。




艶子の形のいい眉がピクリと跳ねる。




「岡山卓真。つまんないの、男からだわ」


と、携帯電話を渡される。