「また、弾き始めたって聞いたから来たのに。そんな音を出しているようじゃ、前よりもっと酷いじゃない」
ストレートの長い髪、野獣のような瞳、真っ赤なルージュの口元に、露出の多い服、むせ返るような香水の匂い。
「お久しぶりです。艶子さん」
香川艶子(カガワ ツヤコ)は、プロのピアニストだ。
たまに、気まぐれで父の店で弾いている。
彼女に初めて会ったのは、母のピアノを聴きに行った時の事だ。
突然だった。
まだ演奏が終わらぬうちに、母の隣りに腰を屈め、彼女は即興で連弾を始める。
二人の異質の音が絡み合い、魂が抜かれるようなステージになった。
静と動の激しい衝突が、こんなにも美しくなるとは思わなかった。
俺は、口を開いたまま、しばらく放心状態で。
その日は会話を交わす事はなかったけど、後日、母が招いてウチに出入りするようになった。
「来年、音大に入りなおすってお父様から聞いたけど、空耳だったのかしら?」
「いえ、それは本当です」
ストレートの長い髪、野獣のような瞳、真っ赤なルージュの口元に、露出の多い服、むせ返るような香水の匂い。
「お久しぶりです。艶子さん」
香川艶子(カガワ ツヤコ)は、プロのピアニストだ。
たまに、気まぐれで父の店で弾いている。
彼女に初めて会ったのは、母のピアノを聴きに行った時の事だ。
突然だった。
まだ演奏が終わらぬうちに、母の隣りに腰を屈め、彼女は即興で連弾を始める。
二人の異質の音が絡み合い、魂が抜かれるようなステージになった。
静と動の激しい衝突が、こんなにも美しくなるとは思わなかった。
俺は、口を開いたまま、しばらく放心状態で。
その日は会話を交わす事はなかったけど、後日、母が招いてウチに出入りするようになった。
「来年、音大に入りなおすってお父様から聞いたけど、空耳だったのかしら?」
「いえ、それは本当です」
