「雨降って地固まるじゃん」


杏奈と二人で、キャンパスを歩いていた。



雲一つ無い秋空だ。




卓真は、夕べ飲み過ぎたとかでサボり。



莉玖は違う講義を受けていた。




「でも、莉玖は音大に行っちゃうんだね」

と、杏奈は残念がった。



それでも莉玖は授業をサボらない。



せっかく入学したので、二年間はきちんと学校へ通うそうだ。





「同じ都内だし。離れるわけじゃないから」



「んーでもさあ、同じ大学に通ってれば、後、二年間はべったり一緒にいられるのに」



「そうだけど……」



莉玖は元々音大に通うつもりだった。



高校の受験の時は母親の死のショックでピアノが弾けなくなって諦めたけど、また彼は音大を目指す事になった。



「あれ?なんだろ、あの人垣……」

と、杏奈が指差す。



中庭に人が集まっていた。



みんなで立ち止まって何かを見ている。