「誉、支度大丈夫?」


「うん。あ、待って携帯…」




何時しか奴は私を『誉』と呼ぶようになり、

私は奴を『仁美』と呼ぶようになっていた。


誰がそうしろと言うでも無く、お互いが自然にそうなっていったのだ。




「ごめんなさい。次は支度バッチリよ」


「じゃあ、行こうか」




少し古ぼけたアパートの扉に小さな鍵をかける。



今は看護師免許を取る事で精一杯の私と、大学とバイトで忙しい仁美は小さなアパートを借りるのが精一杯だ。



だけど、私はこの古ぼけたダサイ扉を愛しく思う。