仁美君が今見つめている方向は圭介へと繋がっている。


愛おしむ横顔。
綺麗だと思った。



そんな風に、私を見てくれたら良いのに。
そうとも思った。




『私を見てくれる日は来ないの?』




振り向いてはくれない相手を思い続ける。なんて…

何だかそれって、虚しくないかしら?





「誉ちゃん、俺…」


聞きたくない。


何も、聞きたくない。



「ごめんなさい。帰る」

「誉ちゃん!?」




私は逃げるように店を出た。






初めて、恋がこんなにも苦しいものなんだと知った。



初めて、私だけを真っ直ぐに見つめて欲しいと思った。




初恋のようだった。