「そろそろ寝るぞ」

ふと、背中から抱きしめられて耳元に聞こえてくる甘い声。
落ち込んでいる私の気持ちをぐっとつかんで優しくほぐしてくれるよう。

自分から体を反転させて、健吾の体にしがみついた。

「ん…？柚も赤ちゃん返りか？」

私の背中を優しく撫でながらくくっと笑う健吾。

「…違うけど…」

反論しながらも更に気持ちをこめて健吾に抱き着く腕に力を入れた。
伝わる健吾の鼓動が懐かしくて涙が出てきそう。
入院中も、何度となく抱きしめて励ましてくれたけれど。

「…ただいま」

ようやく帰ってきた私の愛する場所。
長い間離れていた時も忘れた事なんてなかった唯一の場所。

「…おかえり。…待ちくたびれたぞ…」

そう言って私をぎゅっと抱きしめてくれる熱が、夢のようで嬉しくて幸せで…。

「愛してる…。大好き」

呟く言葉が震えてしまうのも心地好かった。