葵ちゃんから離れない桜は、お風呂もミルクも全部葵ちゃんに世話をしてもらって、私には用心深い視線を時々向けていた。
「…明日からは、柚ちゃんが頑張ってね」
桜の様子なんか大した事ないとでもいうように明るく言う葵ちゃんは、迎えに来た相模さんの車に乗って帰って行った。
ベッドで眠る桜は、今日初めて見る穏やかな表情で、寝顔でしかゆっくりと我が子の顔をじっくり見る事のできない切なさが溢れてきて。
その場から離れられずにいた。
桜の花びらが舞う壁紙がかわいい子供部屋。
無事に桜を産んで、この部屋で一緒に過ごす事ができるように、健吾と二人で決めた。
その願いは叶ったけれど、こんなに切なく寂しい気持ちで過ごす事になるなんて思わなかった。
私よりも葵ちゃんに抱かれる時間が圧倒的に多かった桜が、葵ちゃんになつくのは仕方ない…。
そう納得しようとしても、母親なんだから、文句なしに私の胸に飛び込んできてくれると思っていたから…かなり落ち込んでしまう…。

