私の腰を抱く健吾からゆっくり離れて。

「桜…遅くなってごめんね。おいで…」

葵ちゃんに抱かれる桜に差し出した両手が、桜の体に触れた途端に

「ぎゃぁー」

大きな声で泣き出した桜。葵ちゃんの胸にしがみついて、ぎゅっと離れようとしなくなった。
顔を埋めて泣く小さな我が子…。

「…桜…」

何が起こったのか、瞬間わからなくて茫然とした私。

「桜ちゃん、どうしたの?お母さんだよ。
やっと一緒に暮らせるんだよ」

桜をあやしながら、言い聞かせる葵ちゃんだけど…。
一歳にも満たない赤ちゃんに、そんな言葉が通じるわけもなくて、ただただ泣いて葵ちゃんにしがみつく桜を、悲しく見つめるしかできなかった。

「柚、大丈夫だから…」

健吾に肩を抱き寄せられて、慰められても。

思ってもみなかった現実を目の当たりにして、どうしていいのかわからなくなった。