優しい声




読み終わって…。

ゆっくりと絵本を閉じて桜を見ると、なんだか今にも泣きそうな顔でじっと私を見つめる視線とぶつかった。

大きな目を見開いて、何かを言いたそうにしている桜は、あらら…と言う間もなく…

「えぇーんっ」

両手両足をバタバタとしながら高い声を上げる桜…。

「どうしたの…?
絵本が気に入らなかったの?」

座ったまま抱き上げてあやしても治まる気配のない様子に慌てるしかできなくて、とにかく抱っこしてあやすだけで…。

どうしてこんなに泣いてるのかわからない事に落ち込んでしまうし、葵ちゃんならすぐに桜を機嫌良く寝かせる事もできるんだろうなあって更に気持ちは地面の向こうまで落ちる…。

はあ…。

絵本を読んであげるしかできない私なのに…。

読んであげて、こんなに泣かれてしまうなんて。
絵本が嫌いなのかな…?
必死で手足を動かす位に嫌…?

「さくら…ごめんね…
絵本嫌だったのね…?」

ささやく私のお腹を、弱いながらも蹴ってくるさくらをなだめながら…私も泣きそうになってくる。