優しい声

しばらくの間膝の上の桜に夢中になっていると、
ソファの上に何冊か積まれている絵本が目に入った。

葵ちゃんが読んでくれてたのかな…。

桜がお腹にいる時には、話しかけるように何回も読んであげてた。

無事に出産できるかわからない不安な気持ちを追い払うように一生懸命読んでいた…。
直に聞かせる事ができるように祈りながら…。

「読んでもいい?」

そっと開いた布絵本。

彩香ちゃんに貰って何度も読んだっけ…。

「読むわよ…」

片手で桜を支えながら、絵本を開いて読みはじめたら…それまでと違って動かなくなった桜。

読み進めていくうちに、身体も視線も私に集中していく桜…。