優しい声

ぐっと引き締まった健吾の表情に気づいて、あれ?って思った瞬間。

抱き寄せられたかと思うと、あっという間に私は健吾に抑えつけられていた。
上からじっと私を見つめる健吾は意地悪な笑顔で、口元にもそれは表れていて…。

「また好きになったんじゃない。
ずっと好きなんだ。
忘れた事なんてない」

わざとかな…。
敢えて明るく言う時の健吾は何かを隠してる事が多い。
多分今は…。

「照れてる…?」

両手を健吾の首に回して引き寄せると、そのまま健吾は私の首筋に顔を埋めて動かなくなった。

入院している時にも、私が落ち込むと、こうして体を寄せて励ましてくれた。
なかなか進まないリハビリにぐったりした時や寂しさにくじけそうな時。

「ねえ健吾…。
健吾も私と同じくらい寂しかったんだね」

きっと。
こうして健吾だって。

私の体温を感じながら寂しさやつらさと折り合いをつけてたんだな…。

そう気づくと余計に愛しくなってしまう。
さほど若くもないし、子供だっているけど、どんどん健吾に恋してしまう。

好きや愛してるじゃ足りないくらいに…。

「健吾に愛されて…本当に幸せ」

その言葉をきっかけに、健吾は私の唇に深いキスを落として、身体中を這うように指先が熱を引き寄せて…。

溺れてしまいそうな私を離さないまま…。

私も身体全体で健吾を感じはじめた時…。

「えぇーんっ」

近くに置いてあるモニターから聞こえる桜の泣き声…。
隣の部屋に寝ている桜が目覚めて何かを要求…。

おむつかな…。

がくっと力の抜けた健吾をギュッと抱きしめながら、父と母に戻った…。

ふふっ。