優しい声

「生きてるだけで十分だったし…。
健吾の人生の中に少しでもいられるだけで幸せだったから。
それに。
感情を閉じて生きなきゃ潰れてしまいそうだったから。

健吾は誤解してる。

事故のあと負の感情だけじゃなく…全部の感情を隠したの。

今以上を望むなんて図々しい…って。
事故で助かった命に感謝しながらただ仕事だけしようって…」

「…そんな風に思わせたのは俺だよな。悪い…」

「そうかも…。

でも、もう一回幸せな感情を与えてくれたのも生きる楽しさや…命への執着を教えてくれたのも健吾だから。

健吾じゃなきゃできなかった」

ふふっと笑いながら、体を起こして健吾に軽くキスをした…。

「どんなに私が変わっても、選んでくれて…愛してくれて…ありがとう。

また…好きになってくれてありがとう」

そんなつもりはないのに、視界が熱くなって揺れて…あぁ…私泣いてるんだな…。

頬をゆっくり伝う涙が健吾の体に落ちていくのを見ながら…解放された気持ちから生まれる幸せを心地好く感じてる。