優しい声

「健吾…？」

「体に大きなハンディを抱える人生を背負って、一人でリハビリに耐えて。
俺に再会しても文句も言わずに笑って接してくれて。
おまけに俺にはいろんな女が周りにいたし…。

柚が望むなら柚の前から消えるし殴らせる事だってしたのに…。

前みたいな感情は一切見せずに穏やかに耐えて。

一人じゃなんにもしようとしなかったのに、
『システム業界の女王』なんて呼ばれるくらいに自立してるし」

はあっとため息をつく健吾…。

そんな風に受け止めてたなんて初めて知った。
再会してからは、健吾の側で笑えるだけで幸せだっただけなのに…。

「だから…桜の事で悩んで愚痴る柚が嬉しくて仕方ないんだ。
高校の時に俺が止めてしまった流れがまた…優しく流れはじめたみたいで…やっと柚が俺の側にずっといるって実感できる」

「…」

何も言えない…。

ぎゅっと健吾の体にしがみついて。
それに応えてくれる健吾の体温に溺れてしまう…。

気づかなかった健吾の切なさが…消えていくように願いながら。

そして、そんな面倒な感情を抱かせ続けてきた私自身に少し反省しながら。