優しい声

「事故の直前…俺ら喧嘩して雰囲気悪いまま離れて…。
柚はその時拗ねて泣いて落ち込んでたよな。
ていうか、そんなのしょっちゅうで、慣れてたんだけどな…」

…確かに。

あの事故に遭う直前に喧嘩して、冷たい空気が漂うままに、健吾はバスに乗り込んでバスケの合宿に行ってしまった。

直前と言うよりもずっと私達はうまくいってなくて。
会いたい気持ちを我慢する事に疲れていた私の感情は激しく揺れていた。

私と会う時間はないのにどうして他の女の子とは出かけるなんて…信じられなかったし疲れてた。

拗ねる怒る落ち込んで泣く。

フルコースで負の感情出しまくってた。

「再会した時…あまりにも我慢強い女になってて驚いたし…ショックだった」

え?
悲しげな声音は、そのまま健吾の鼓動にも表れて。

大きくトクトク跳ねる音が聞こえてくる。

「俺のせいだよな…」